日本の財団法人制度は、“明治維新の産物”といわれます。
明治4年、廃藩置県に伴い、明治政府は旧藩主の新しい立場の確立とその莫大な財産の処遇に対応しなければなりませんでした。それまで各地方における行政は、旧藩主たちの権力と潤沢な財産によって支えられていましたが、藩主たちに引導を渡してしまった今、中央集権を謳う明治政府としては、これを承継する力も方策もありませんでした。結局、困った明治政府はその対応の知恵を“欧州”に求めることになりました。
欧州では19世紀末からすでに民主化が進み、フランスやドイツでは“foundation”なる非課税の法人格を民法で構築していました。これに目を付けた明治政府は、旧藩主たちにこの法人を設立させることにより、保有している城、美術品、財宝 etc… を非課税で法人に移動させ、その運用益も非課税、その他の相続税等の一切を非課税とすることにしました。これにより、本来は課税対象となるはずの旧藩主の財産は、ただ法人を設立することによって一切が守られたのです。それどころか、運用益が非課税、寄付も非課税で集められることから、逆に法人の財産が増えていきました。そして、これが明治政府の意図するところだったのです。
つまり、明治政府は、旧藩主の財産を非課税法人の設立によって手厚く守り、財産を増やさせることによって、従来どおり地域社会へ貢献させようと考えたのです。
今から遡ること約120年前、明治29年のことでした。
欧米では“foundation” 、日本ではそれを“財団法人”と呼びます。