Column

[0年0月]
財団オーナーの使命
2014年04月16日

財団法人の設立を志すにあたり、必須となるキーワードが“社会貢献”です。

前回のコラムでもお話しさせていただいたように、幕末から昭和初期にかけては、財団法人の制度はもっぱら旧藩主や貴族などの特権階級のために作られたようなものでした。しかし、第二次大戦が終結し、社会・経済の構造が一変するとともに、一般の“企業経営者”が財団法人の設立に乗り出すようになりました。長らく日本の重税に頭を悩ませていた多くの経営者たちが、莫大な課税を回避するため、その優遇税制に目をつけたのです。彼らの目論みは大当たりでした。財産移動、資金洗浄 etc…すべてが嘘のようにうまくいき、タックスヘイブンさながらだったのです。社会貢献など二の次でした。

しかし、財団文化の本家本元である欧米諸国はこれを笑いました。社会貢献に背をそむけて金に拘泥する日本人の姿を、野蛮とみなしたのです。

そもそも、財団の制度は、“キリスト教精神”と“騎士道精神”に裏打ちされた崇高な目的にもとるものであり、それは慈善と博愛による社会貢献を実現するための制度として生まれました。いまも世界で活躍するロックフェラー財団、フォード財団などは、社会貢献の精神を一番に尊重していることで知られていますが、これは財団法人のお手本といってもいいでしょう。そんな彼らから見れば、日本人のやり口は到底許せないものだったはずです。

たしかに、財団法人を設立すれば究極の優遇税制を取り込むことができますし、そのメリットは無限大です。優遇税制を使って資産防衛や相続対策を図ろうと個人の勝手ですが、絶対的な建前として忘れてはならないのが“社会貢献”なのです。これは掟といっても過言ではありません。

ところで、財団の制度は西ヨーロッパをはじめとして世界中の自由主義国家、資本主義国家に普及していますが、なかでもその圧倒的多数が存在するのが、実は“イギリス・アメリカ”なのです。

その理由は諸説ありますが、どちらもキリスト教国であること、民主主義と互助精神が浸透していること、資本が豊かであることが挙げられるでしょう。そこでは、経済的に成功した人たちの多くがfoundation(財団)を設立し、熱心に社会貢献を行っています。

日本の財団オーナーは、以下を押さえておくべきでしょう。

優遇税制と社会貢献は表裏一体であること。

社会貢献は世界の常識であること。

財団オーナーの使命とは、これを当たり前に認識し、行動に移すことに尽きます。